薩摩川内市内には、市にゆかりのある画家の作品を鑑賞できる場所があります。今回は画家山口長男と、画家・イラストレーター生賴範義の作品をご紹介します。
薩摩川内市御陵下町、川内高校内にある可愛山同窓会館「可愛山ギャラリー」
同行してくれたのは、地域おこし協力隊上甑地域隊員の純浦彩さん。東京藝術大学・大学院で彫刻を専攻したアーティストです。
活動の様子は「薩摩川内市ぽっちゃんプロジェクト(上甑島)」等で、知ることができます。
純浦さんの作品例(写真)。どこかノスタルジックで温かみを感じます。
最初に訪れたのは、川内文化ホール。施設長の入江浩樹さんに案内して頂きました。こちらの大ホール舞台の緞帳(どんちょう)は、山口長男がデザインを手掛けた貴重なものです。
洋画家、山口長男(やまぐち・たけお)は、薩摩川内市の川永野町に本籍をもつ市ゆかりの画家。日本抽象美術の開拓者として知られます。
客席からのこの眺め、ご覧になったことのある人も多いのでは。緞帳のタイトルは「総親和と躍進」。薩摩川内市の象徴である川内川の流れを独特の画風で表現しています。
長男のサイン
もうひとつ、川内文化ホールで見逃せないのがこちら。大ホール入口にある旧川内市の名誉市民の肖像画です。この肖像画(ひとり除く)を描いたのは、日本を代表する画家・イラストレーターの生賴範義(おおらい・のりよし)。
力強いタッチで描かれ、故人の人となりが浮かび上がってくるようです。
純浦さん「生前どんな善行を重ねたら、生賴さんに描いてもらうという幸運にあずかれるのだろう。でも完成した絵を本人が見ることが叶わないのは、なんと気の毒なことだろう…」
上の写真は、生賴氏のご子息であり、画家のオーライタロー氏が「父の仕事場」として紹介されたものです。現在、展示されている肖像画を確認できます。
川内文化ホール・大ホールで催事がある時に観覧可能です。イベントと併せて入口の肖像画と舞台の緞帳も、是非ご鑑賞ください。
生賴範義「我々の所産」
続いて訪れたのは、県立川内高等学校の敷地内にある可愛山同窓会館。同校の卒業式の模様をお伝えした際にも訪れた「可愛山ギャラリー」。川内高校創立120周年を記念して開設されました。こちらには生賴範義の大作「我々の所産」が展示されています。
生賴氏は兵庫県明石市生まれ。第二次世界大戦中に知人の伝手で薩摩川内市に疎開し、10歳から18歳までの多感な時期をこの地で過ごしました。亀山小学校、川内北中学校、そして川内高校の卒業生です。その縁で、可愛山ギャラリーに氏の作品が寄贈されました。
作品に見入る純浦さん。
「作品を見てしばらくは、すごい・・・やばい・・・かっこいい・・・と、語いを失ってしまった」
純浦さん「この絵にはすべてのものが描かれている。過去と未来、戦争と平和、生と死、宗教と科学、すべてがそこにあり、現生を表す曼荼羅絵図のような、作者の悟りの世界が描かれているように感じた。あまり言葉にしてしまうと安っぽくなってしまうので、ぜひ本物を見てほしい」
同ギャラリーには生賴氏の川内高校在学中の作品もあります。また、川内歴史資料館には「破壊される人間」が寄贈、展示されています。こちらの大作も必見です。
可愛山ギャラリーには、このほかにも川内高校ゆかりの画家による作品が展示されています。2018年5月現在、無料で鑑賞できます。ご訪問の際は、必ず事前にご連絡ください。教育機関内のギャラリーとなりますので、ご理解・ご協力のほど、よろしくお願いします。
■可愛山同窓会館
鹿児島県薩摩川内市御陵下町6-3
同窓会事務局:TEL 0996-20-2031
身近に触れることのできる薩摩川内のアート。毎日の暮らしのなかに特別な瞬間を加えてくれるものとして、大切に守り、共有していきたいと思います。