3月に入り、季節はそろそろ梅から桜へ。臥竜梅の名所、薩摩川内市東郷の藤川天神は今年も多くの梅見客でにぎわいました。鹿の食害が心配された今年の臥竜梅ですが、満開となった2月下旬には芳醇な香りを漂わせ、可憐な花が咲き誇っていました。来年も美しく咲いてくれるといいですね。
青空に咲く臥竜梅(2021年3月3日撮影)
受験シーズン、多くの参拝客が訪れています。
受験生の皆さん、頑張ってくださいね!
藤川天神への道中手前にあるのが、こちら久保茶屋です。戦後まもなく酒屋として創業、旧・藤川小学校の前で営業してきました。20年ほど前に現在の場所に移り、お酒や日用品のほか、地元の生産者が持ち寄る生鮮食品・加工品を販売しています。
奥には食堂(ランチ営業11時30分~)があり、特にみそちゃんぽんが好評です。田海川のせせらぎを耳に、テラス席でお食事することもできます。
お客様に加え、地域の方が次々とやって来て、久保明子さん(写真右)と話をされていきます。
手づくりのほうきを納品に
藤川の暮らし、恵みいっぱいの久保茶屋で目にしたのがこちら「けせん(けしん)」です。リポート「まもなく梅の季節到来。東郷藤川」でご紹介したところ、「懐かしい」「天神参りのおみやげといえばけせんだった」という声がありました。
”けせんとは、ニッケ(肉桂)と呼ばれるクスノキ科ニッケイ属の木のこと。鹿児島では「けせん団子(小豆団子をけせんの葉で包んだ菓子)」で、ご存知の方も多いでしょう。年間を通して暖かい気候の地域に育ち、鹿児島県内では庭先によく植えられていたそうです。けせんの根の皮にはシナモンのような香りと甘みがあり、古くから八ッ橋やニッケ飴に使われてきました。”(同リポートより引用)
この「けせん」を久保茶屋に卸しているのが、加治屋建夫さん・タダノさんご夫妻。けせんを取り始めてもう50~60年くらいになるそうです。加治屋さんは林業に携わられたのち、現在は藤川にお住まいのグループでお米づくりなどをされているそう。「親父の代からこの季節にはけせんを掘ってきて売ってましたよ。昔は店がなかったから、ここの軒先で薪のようにして藤川天神に行く人たちに売っちょいおった」と建夫さん。タダノさんも「私が嫁に来る前からだから、60年は前よね」と懐かしそうに振り返ります。
けせんの木
加治屋さんがお店に卸すのは、山にあるけせんの木から根を掘ったもの。掘って洗って乾かし、15㎝くらいにカットして束ねて売っています(ひと束150円)。この日は加治屋さんの畑に植えてあるけせんの木を見せてもらいました。樹齢20~30年くらいとのことですが、かなりの大木です。昔は民家の庭にもよく植えられていたそうです。
こちらは「苗が欲しい」というお客様のために育てているもの。小さな苗でもしっかりとけせんの香りがします。
けせんの根がお店に並ぶのは1月下旬から3月いっぱい。「新芽が出ると根の皮がはがれてきたり、えぐみが出る。3月いっぱいは出してくれと言われるから、私が元気なうちは掘って出しますよ」と笑う加治屋さん。天神参りの素朴な甘み、ぜひ味わってみてください。
けせんの使い方にあった「けせん焼酎」を試してみました。梅酒を漬けるような感じで、焼酎にけせんの根と氷砂糖を目分量で入れてみました。
けせん焼酎とけせん団子
1週間程度で写真のように色づいたら、けせんを取り出します。(二度くらいまで再利用できるそうです)。シナモンやクローブ、クラフトコーラを連想させる香りと味わい。炭酸水で割ったり、オンザロックで飲んでみるのはいかがでしょうか。お菓子の風味付けとしても使えそうです。手前はけせんの葉を使った「けせん団子」。ほんのりと香りが移り、葉には殺菌作用が期待できるため、鹿児島では小豆だんごやよもぎだんごに古くから使われてきました。
天神参りの懐かしい味、けせん。藤川天神までの道路が便利でなかった時代には、けせんの根をかじりながら歩いて帰ったという方も多かったとのこと。臥竜梅とけせん、地域の伝統が受け継がれていくことを祈ります。
青い実をつけていました(2021年3月3日撮影)
西郷どんの飼い犬、西郷つんは藤川生まれの薩摩犬。藤川天神に銅像があります。