竹炭ですこやかな暮らし「竹炭工房アカリトキ」

竹林面積日本一の鹿児島県。薩摩川内市にも豊かな竹林があります。この竹資源を活かそうと、様々な取り組みが行われています。「竹炭ですこやかな暮らしのお手伝い」を目指す、竹炭工房アカリトキの活動を取材しました。

竹炭工房アカリトキの小田初美さん(写真左)、堂込和男さん(右端)ご家族

竹炭工房アカリトキは、京都からUターンしてきた小田初美さんが、お父様である堂込和男さんのつくる竹炭を使って「何げない日常にそっと寄り添う 竹炭ですこやかな暮らしのお手伝い」を目的に活動を始めました。

川内川河川敷沿いのSOKO KAKAKAで開催している「朝活!竹炭で焼くパン」のワークショップもそのひとつ。

土曜日の朝8時。夏休みに入った子どもたちが続々とやってきました。まずは1本、竹を選んで…

小田さんが用意したパン生地を軽くこねて、伸ばします。

竹にアルミホイルを巻き、パン生地をくるくると巻きつけて…

熱した竹炭で焼いていくと…こんなにふっくら、こんがりと美味しそうな焼き色に。

焼きたてアツアツのパンを、ちぎって頂きます。こんがりと焼けた部分はカリっと香ばしく、中身はふんわりもっちり。

磯長水産の不知火(しらぬい)のジャムを添えて。姉妹で参加したふたりも「おいしい」とニッコリ。

竹炭パンの様子を見守る小田さん。パンのワークショップを思いついたのは?

「これだったらバーベキュー感覚で楽しみながら、竹炭に触れてもらえるかなと思ったのがきっかけでした。竹炭は木炭よりも火力が強くて、火の持ちもいいんです。パン生地も扱いやすく、竹炭で焼くのに適した生地を準備しているので、どなたでも美味しく焼けると思います」

竹炭小屋で火入れを行う堂込和男さん

この竹炭をつくっているのが小田さんのお父様、堂込和男さんです。30年ほど前から竹炭づくりに取り組み始め「竹炭の翁」と自他ともに認める竹炭づくりの名人です。小田さんの帰郷をきっかけに、若い人たちが竹炭に関心を持ってくれることが、とても嬉しいそうです。

炭焼き窯はすべて堂込さんの手づくり。窯に温度計はなく、立ちのぼってくる煙の色や香りで窯の様子を判断します。条件が揃うと、火入れから数時間後に、竹が自分で熱を持ち燃える、自燃(じねん)という状態になります。自燃の状態になってから17~18時間を保つと、竹が炭になるのだそうです。

竹炭の原料となる孟宗竹。長さを揃えて4つ割りにし、1か月以上干して水分を抜きます。乾燥具合は「見て、さわってチェック」。試行錯誤を重ね、時には「爆発にも遭遇」しながら、今のやり方にたどり着いたという堂込さん。「一時期は竹の魅力に取りつかれたように、無我夢中でやってましたね」と奥様も振り返ります。小田さんの活動の背景には、ご両親が少しずつ竹炭を広めてきた経緯がありました。

細い枝は「竹炭マドラー」用のもの。焼き締めた時に、ちょうどいいサイズになるものを揃えています。

様子を見に来た竹炭仲間と。竹炭ばなしに花が咲きます。

「最初は竹山が荒れて、どうにか竹を利用しないといかん、ということで。竹の専門家が熊本にいると聞いて、訪ねて行き、竹のことや活用法を教えてもらいました。それが30年前くらい。そのころは竹炭を作ろうなんて人はほとんどいなかった。それから少しブームがあって、私もいろんな人に竹炭の作り方から窯の作り方から、教えました」と堂込さん。「実は、この10年はもう作ってなかったのよ。それを初美が川内に帰って来て、竹炭を作って、と言うから」と笑顔で話す堂込さん。「10年作ってなかったけど、よく覚えとったな」

竹炭マドラーと竹炭で焼いたパン

お父様の作る竹炭で、いろんな取り組みをしている小田さん。気軽に取り入れる方法としておすすめなのが、竹炭マドラーです。これで飲みものを混ぜると、まろやかな味わいになるんですよ。

竹炭には、無数に開いたミクロの穴があり、臭いのもとや湿気を吸着してくれます。また、ミネラルが豊富に含まれた竹炭は、美容・健康にもいいとされていて、日々の暮らしに取り入れることで、快適にすごせます。水で洗えば、くり返し使えるエコな竹炭。最後は土にかえります。

※竹炭工房アカリトキ ミニリーフレットより引用

自然素材が見直され、竹ざるや竹かごも人気を集めている現在。暮らしの中でささやかなしあわせを感じられる竹炭をお届けしたい、と意気込む小田さん。渋い光を放つ竹炭グッズは実用的でありながら、インテリアをシックに引き締めるおしゃれアイテムとしても活躍しそうです。新しいアイデアや工夫次第で、竹は世界に誇る資源になるかもしれません。

竹炭工房アカリトキInstagram

2021年7月取材・文 泊 亜希子