川内川の流れる薩摩川内市は「水の都、霧のまち」と称されるほど、霧に包まれることの多い土地です。そんな薩摩川内市で見ることのできる絶景「川内川あらし」を知っていますか。川内川あらしとは「晩秋から初春にかけて、薩摩川内市の雄大な自然が生み出す奇跡の光景」です。(※川内川あらし公式サイト参照)
月屋山展望台より(パノラマ)
厳密には「川内川あらし」の定義があるのですが、わかりやすくいうと、発生した霧が川内川上空に集まり、川の流れに沿って河口へと動いていく現象を指します。地形に加えて天気、湿度、風速と様々な条件が重なった時だけに発生する希少な、気象現象なのです。
一度は生で見てみたい、いや、見ておかなければと、川内川あらしの存在を知ってから思うこと早や数年。ついに念願かないました!!その様子をドキュメントでお伝えします。
寺山いこいの広場・山 cafe 付近より
2021年11月15日午前8時。所用あり川内駅に行った帰り道、川内のまちは真っ白い霧に包まれている。これは!と思い、川内川あらし公式ツイッターをチェック。【午前5時半、川内川河口付近には霧が流れ込み、風速4m/s以上でけあらしが発生。今シーズン8回目の川内川あらし発生です。】よし、まずは寺山に行ってみよう。山を上がるにつれ、視界が晴れていく。公園の駐車場に車を停めて見晴らしスポットへ。眼下にひろがる川内のまちは、雲海のような厚い霧にすっぽりと覆われていた。ふわふわの綿でフタをしたみたい。そこに居合わせた女性と「すごーい、すごいですね」と感動を分かち合う。人間、感動すると誰かと共有したくなるんですね。
「川内川あらしと知って見に来られたんですか?」「 (川内川あらし見晴らしスポットである)月屋山、行ったことありますか? 」「ないです」「私も一度昼間に行ったっきりなんですけど。せっかくだから、行ってみませんか」「 そうですね、行きましょう」と、会って3分ほどで意気投合し、私たちは川内港近くにある月屋山へと向かった。(寺山公園~月屋山は車で約25~30分)
月屋山駐車場に車を停めると、すでに先客がいる模様。時間とともに霧は晴れていく。少し急がなければ。「15分くらいで登れると思います」と、数年前の記憶をたどって伝えたものの、朝イチの軽登山はなかなか、いや結構しんどい。
以前より登山道や目印はかなり整備されています。一緒に登ったNさん、聞けば元陸上部とのこと。さすがの健脚!
月屋山に建つ愛宕神社
途中、写真撮影をしている男性ふたりと遭遇。息を整えながらあいさつをする。「あともう少しですよ、頑張って」
駐車場入り口から20分ほどで山頂に到着。展望台に上がります。
可愛山陵に眠るニニギノミコト、神話の舞台もかくやという景色。
目の前を流れる川内川あらし。向かいは風車の丘、柳山。
河口大橋のあたりまで、厚みをたたえた霧が流れ込んでいる。
そして、東シナ海へ。ゆったりと流れる川内川あらしは、しばしば白い龍にたとえられます。日が高くなるにつれて、少しずつ薄まってゆく川内川あらし。神々しさと儚さ。消えゆく先端は、海を渡ろうとする鶴の細い首のように見えました。
先ほどの男性陣もカメラを手に
シャッターチャンスを狙います。
月屋山を登る際には登山靴・軍手等があると安心です。今回は寺山(午前8時ごろ)~月屋山展望台(午前9時ごろ)と、川内川あらし観察としては、やや遅めの時間帯だったかもしれません。それでも十分に川内川あらしの美しさ、素晴らしさを堪能することができました。このまちに暮らす人だからこそ見ることのできる「川内川あらし」。思い立ったが吉日。白い霧の朝、ぜひ一度、見て欲しい絶景です。
FMさつませんだい月曜11時 「今村聡のオー・SORA・ミヨ!」
せんだい宇宙館館長、気象予報士、川あらしハンターの今村聡さんがパーソナリティを務める番組です。番組コーナー「クローズアップ川内川あらし」では川内川あらしはもちろん、日本三大あらし「肱川あらし」「円山川あらし」の最新情報をたっぷりお伝えしています。ぜひお聴きください。
寺山いこいの広場
月屋山展望台
2021年11月取材・文/泊 亜希子