早春のやなぎやま・柳山アグリランド

薩摩川内市高江町。可愛山陵など薩摩川内のシンボルから、東シナ海に浮かぶ甑島まで見渡すことのできる柳山があります。地元、峰山地区コミュニティの皆さんがこつこつと手をかけて、四季折々の花々を植えたり、コーヒーや焼き芋を用意して市民の皆さんをお迎えしています。この季節は薩摩川内・冬の風物詩、川内川あらしの絶景スポットとしてもおすすめです。冬晴れとなったある日、やなぎやま村のメンバーとして活動する瀬野みつるさんに同行しました。

柳山から川内の町を見渡す瀬野さん

朝7時30分。この季節は毎朝、柳山に登っているという瀬野さん。川内川あらし発生を予測するのは気象の専門家でも難しいのですが、瀬野さん独自の目安があるのだそう。「早朝、自宅近くの山すそに霧がかかってたら、だいたい発生しているかな。そこを見て判断しますが、発生していなくても、とりあえず柳山には向かいます」と車を走らせる瀬野さん。「生まれも育ちも高江です。昔から霧は深かったけど、それが珍しいことで、川内川あらしと名付けられたと知って。何か協力できたらなと思い、柳山に登って撮影をしています」

高江から柳山へと向かう道、風車が朝陽を受けてゆっくりと回っているのが見えます。川内駅から柳山(アグリランド)へは車で約30分。民家を抜け、山道を走ると「柳山アグリランド」に到着します。

レストラン柳山ではコーヒー、ピザ、カレーと焼き芋を提供しています。オフシーズンの現在は土日祝の10時~15時営業です。桜まつり、コスモスまつりなどの催事に合わせて毎日営業する時期もあります。駐車場に車を停めて、柳山山頂へと向かいます。徒歩で片道約15分です。

柳山山頂からの眺め。東シナ海へと流れ込む川内川河口が見えます。川内川あらし観察スポットの月屋山の対岸になります。

月屋山側から見た柳山。風車が見えますね。川内川あらしを間近に見るなら月屋山、川内川あらしと町を見渡すなら柳山、といったところでしょうか。(月屋山からの川内川あらし記事はこちら)

高江新田。江戸時代、沼地だった高江は長崎堤防をはじめとする治水工事により、豊かな水田へと生まれ変わりました。薩摩川内市民なら小学校の時に習ったものです。

遠くは霧島連山、桜島が見える日も。うっすらと霧のかかる山々はいつ見ても神秘的な風景です。この日、川内川あらしは発生せず。青空の広がる冬の朝となりました。

川内川あらし発生時の柳山山頂からの眺め ※瀬野みつるさん提供

山頂には霧島神宮から分社されたという、霧島神社の鳥居と祠があります。

山頂のふたつの岩には何やら文字が刻んであります。地元の方のお話では、霧島神社は戦の神様だといわれていて、戦地に赴く前にここに登ってお祈りをして、自分の名前を彫っていったということです。瀬野さんも「神社に頭を下げて、登らせてもらってありがとう、と毎朝お礼を言います。今のこの景色を見ながら、なんとも言えない気持ちになりますね」とぽつり。そんな歴史もある柳山です。

山頂からふもとに降りると、峰山地区コミュニティの皆さんが山小屋に集まっていました。小学校にウサギのえさを届けてきた男性。柳山アグリランドで飼っているヤギのえさやりなど担当しています。

やなぎやま村代表の松田さん(左)と瀬野さん

やなぎやま名物の石焼き芋。お手製の窯でじっくりと焼き上げます。甘くておいしいと大好評。

柳山アグリランドの運営に携わる峰山地区コミュニティの皆さん。「昔はこの一帯で牛の放牧をしていたのよ」と柳山の歴史を教えて頂きました。川内川あらしは3月末まで発生のチャンスがあります。月屋山からの眺め、柳山からの眺め、それぞれの良さがあります。春に向けて、菜の花や桜の手入れも進んでいます。市民の皆さんの憩いの場となっている柳山。この時期ならではの楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。