インターハイ2019・熱戦の記憶(3)

高校生の夏のスポーツの祭典、全国高校総体。男女バスケットボール競技は薩摩川内市のサンアリーナせんだいをメイン開催地として行われ、男女ともに前評判の高かったチームが大会を制し、令和初のインターハイ王者となりました。

宿命のライバル対決!桜花(愛知)が制し令和女王に

5年連続で同じカードの決勝となった女子。序盤の競り合いから徐々にペースをつかみ、粘る岐阜女子(岐阜)を振り切った桜花が、72‐59で2年連続24回目の優勝!

桜花学園・平下愛佳キャプテン。

薩摩川内市のキャラクター・西郷どんの愛犬つん、と。「女の子どうし一緒に写ってくれて、ありがつん」

前評判通りの強さ!福岡第一(福岡)

3年ぶり3回目の優勝を飾った福岡第一

初戦となった2回戦の海部(徳島)を129‐47、3回戦の土浦日大(茨城)を91‐62で撃破。

続く準々決勝・東山(京都)戦は、大会前からベストカードとの呼び声も高く、期待に違わずハイレベルな戦いとなった。点差を詰められる苦しい場面があったものの、70‐56で勝利。

準決勝は開志国際(新潟)戦。81‐55で勝利。東山、開志国際は福岡第一の選手たちも「今大会、手強かった相手」に挙げている(※月刊バスケットボール2019年10月号)

そして迎えた決勝、福岡第一対北陸(福井)。ノーシードながら試合を重ねるごとに成長してきた北陸を相手に、107‐59と圧倒した。

福岡第一・河村勇輝選手。スピード、華麗なパスワーク、シュート力と大会ナンバー1ガードであることを証明した。

河村選手とマッチアップした北陸の2年生ガード土家拓大選手。

チーム一丸となり、一戦一戦勝ち上がってきた北陸。

2年生がフレッシュな力をコートにもたらした。

大会前、川内高校で練習試合を行った北陸。土家選手曰く「あの時はチームの雰囲気最悪で。キャプテンが喝を入れて、そこからガラッと変わった」のだそう。コート上でも一番声を出していましたね、と向けると「それが自分の仕事なんで!」とにっこり。

優勝が決まったあと、部員77名と監督・スタッフが輪になり校歌を斉唱。井手口監督の胴上げに歓喜の声が沸いた。

表彰式。優勝は「素直に嬉しい」と河村選手。小川麻斗選手とのWガード、Wキャプテンで、揺るぎのないチームはさらに上を目指す。

試合後、井手口監督に「どんな大会でしたか」とたずねたところ、ひと息おいて「暑かったね」と、穏やかな顔。柔和な表情のなかに、歴戦の勝負師らしく、スリリングなエナジーのある人だ。連日、晴天続きで文字通り「暑かった」し、大勢の観客が詰めかけ、空調が追いつかなかった部分があったかもしれない。。と同時に、大会そのものも白熱したゲームが続き、こちらもまた「熱かった」。いろんな感慨がそのひと言には詰まっていた。優勝した2018年のウインターカップでは、ハードな守備を指示された選手たちの疲労を憂慮する質問に「高校生は寝て起きたら元気になる」と、かわしていた井手口監督だが、夏の大会ということで、とりわけ選手たちのコンディション調整に心を砕いていたことは想像に難くない。「練習会場を提供してくれた川内北中をはじめ、おかげさまで良いコンディションで試合に臨むことができた」とのこと。”絶対王者”として優勝が半ば当然視される状況のなか、福岡県大会で散ったライバル・大濠高校をはじめとする同県の高校に対して、(決勝進出により)福岡県代表の出場枠を増やすことができたこと、そして優勝にたどり着けたことに、ほっと安堵した表情でもあった。

河村選手インタビュー

-優勝おめでとうございます。インターハイにあまりいい思い出がないと言っていましたが?
「九州でいい思い出が作れて、よかったなと思います」

-今までサンアリーナせんだいで試合をしたことはありました?
「なかったです。鹿児島に来たのも初めてだったので、新鮮味がありました」

-いい環境で練習ができたと井手口先生は仰っていました
「はい。鹿児島の中学校の方も温かく練習に迎えてくださったり、いい環境のなかで試合前のアップや練習をやらせてくださってたので、鹿児島のみなさんに感謝して、この優勝をしっかりと、ウインターカップにつなげていきたいと思います」

-バスケットを頑張る鹿児島の選手にメッセージを
「福岡第一高校がこうやって結果を残しているのは、もともとの能力がすごく秀でているわけではなくて、日ごろの練習をすごく頑張っているから、こういう結果が出ている。しっかりと努力をすること、結果を出したかったら、それなりの努力をするようにしてもらいたいです!」

-鹿児島で食べたものなどで印象に残っているものがありますか
「朝ごはんに、黒豚の親子丼みたいなのが出て、それがすごくおいしかったです」

-川内高校の野口選手に
「U20で一緒に仲良く、楽しくやらせてもらって息も合うので、同じ九州勢として、これからウインターカップなど一緒に盛り上げていけたらいいなと思います」

8月2日採録・約2分20秒

試合後インタビュー(共同)
福岡第一 河村勇輝選手

-今大会を振り返って
「今年の福岡第一は、去年からの主力3人が頑張る、3人のチームだといわれてますが、今大会、土浦日大戦は神田、準決勝、決勝も内尾や控えの6番手、7番手の選手、決勝も山田にスリーを決めてもらったり、すごく助けてもらった。3年生全員が責任感を持って、”3人だけのチームじゃないんだぞ”と、他の3年生も思っていたと思うので、今回それが表現できて良かったかなと思います」

-(北陸のガード)土家くんとマッチアップして
「中国地方の大会で中学時代から戦ってて(河村選手は山口県柳井中、土家選手は岡山県玉島北中)プレースタイルは変わらず、すごく上手く、スピード感があって2年生とは思えないプレーでした。(試合後の声かけは?)「中学校からするとすごく上手くなってるな」と、自分から声をかけたら、「いや、全然。強すぎますよ」と。冬もう一回やれたらいいな、と話しました」

-最初のバスケットカウントを取ったプレー後、珍しくガッツポーズが出た
「チームを鼓舞するひとつの手法でもありますし、準決勝まで自分はあまりギアを上げてる感じではなかったので、今日の試合の前、井手口先生からも「今日はマックスで行け」と言われていたので、自分もチームメイトに「今日は前半から飛ばしていくから、ついてきて」と。前半からチームの雰囲気を良くしていくためにやりました」

-井手口先生は「ミスが多い」と。改めて見えてきた課題とは
「40分間自分たちのペースにするっていうのは難しいことですが、40分のうちの25分から30分、大半は自分たちのペースでバスケットができるようにしないと。今大会は相手のペースが長い時間帯があったり、我慢しきれない部分があったり。ガードがコミュニケーション、みんなに声をかけあったりすることが大事だなと今回通して強く感じたので、これからウインターカップに向けて、40分のうちの多くの時間を自分たちのペースにすることを、練習しながら頑張っていきたい」

-今大会相手チームがゾーンをしかけたり、プレスをしかけてきたり。相手ディフェンスへの崩し方については
「ゾーンディフェンスとか特殊なマンツーマン、寄りが速いマンツーマンに対しての崩しは自分たちとしてはまだまだ成功していなかったが、内尾や神田が泥臭いディフェンスや合わせを上手くやってくれたのですごく助けられた。チーム全員で戦ったって感じです」

-去年のチームと今年のチームの違い
「去年は松崎裕樹さんが、エース、困ったら松崎さんがやる、という感じだった。松崎さんはオールマイティにいろいろやってくれてたのが、今年は一人ひとりの役割がはっきりしていて、リバウンド、シュートだったら神田、ディフェンス、ルーズボール、合わせは内尾とか、一人ひとりが役割をしっかりとこなすようになっているので去年と違って、一人ひとりが責任感を持ってやっているので、強みだと思う」

-試合終了の瞬間、コートにいたくはなかったですか?
「いや、別に。自分が出てなくても全然。やっぱり、頑張っている3年生が最後出てきて、12人中のスタート、セカンドでない、あと2人の3年生が多く、長くコートに出て、、出させてあげたいなという気持ちが自分にもあったし、他のメンバーにもあったと思うし、1秒でも長く、彼らが出ることはいいことかなと思います」

-追われる立場になるが?
「今、自分たちのスタイルが確立しつつあって、それが今、完全に完成しているかと言われたら、全然完成していない。自分たちのスタイルを見失わないように、ひとつの信念を持って、第一のバスケットのスタイルをこれからもっともっと完成度を上げていけたら、ウインターカップでもどこのチームとも戦えると思う」

-追われている感じを楽しんでる?
「いや、プレッシャーはあります。勝って当たり前とか、競ることがダメみたいな。勝っても競ったら他のチームが頑張ったな、みたいな感じになっているので。モチベーションとして追われている立場ではありますが、チャレンジャーの気持ちをもって、ウインターカップでもまたこの場に戻ってこれたらいいと思います」

-キャプテンとして、昨年のウインターカップからインターハイまでどうチームを引っ張ってきたか
「自分たちの代では何も結果残してないぞ、と。去年優勝したのは3年生がいたお陰と、日々、常日ごろみんなで言い合って、まずはインターハイ、自分たちの代でしっかりと結果残していこうと練習中から話して、頑張ってきました」

-全国タイトルを取った
「素直に嬉しいですけど、自分たちが目指しているのはインターハイ優勝だけでなく、ウインターカップを取って、2冠を取って終わることが自分たちの目標なので。ここはひとつの通過点としてウインターカップに向けて頑張っていきたいです」