祝!日本遺産登録・入来麓まち歩き(2)

令和元年、鹿児島県が申請した「薩摩の武士が生きた町~武家屋敷群「麓」を歩く~」が、日本遺産に認定されました。このなかには、薩摩川内市、いちき串木野市など9つの市に点在する「麓」が含まれます。「日本遺産(Japan Heritage)」とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを守り、伝えていく「日本遺産(Japan Heritage)」として文化庁が認定するものです。

今までも、玉石垣の美しい町並みを残し、歩いて楽しんでもらおうと地域ぐるみで取り組んできた入来麓の皆さん。2020年2月に開催された2つの「まち歩き」イベントの様子を「祝!日本遺産登録・入来麓まち歩き(1)」に続き、ご紹介します。

入来麓、旅のスタートはここから!入来麓観光案内所の広い駐車場に集合して、鹿児島まち歩きの達人!東川隆太郎さんと一緒に今回は山城址を攻略します。

山城の前にまずはこちら。「船瀬殿墓(ふなせどんばか)」です。三方を樋脇川に囲まれる入来麓。樋脇川は天然の堀として町を守り、船による水運を担ってきました。船瀬(船着き場)の歴史は古く、なんと奈良時代にまでさかのぼるそう。この船着き場を管理する一族子孫は「船瀬氏」を名乗り、入来院家からも一目置かれる名家でした。船瀬殿墓には鎌倉時代から戦国時代にかけて作られた100基近い石塔群があり、薩摩川内市の指定文化財となっています。

船瀬殿墓付近にも見られる水貯め所。山城はシラス地層の上に建っており、麓の町ではその地層から染み出す水を生活用水に使っていました。

船瀬殿墓のすぐ脇を流れる樋脇川。奈良時代から続く風景と思うと、感慨深いものがあります。

清色城跡、御仮屋馬場の脇の道路を進み、山城址へと登っていきます。

整備されていますが、傾斜のきつい場所もあります。山城址登りの際は、山歩きの靴・服装をお勧めします。手袋も装着すると安全です。

「物見の段跡(ものみのだんあと)」に到着。その名の通り、見張りをする場所だったそうです。

市の文化課や地元の人の協力により、案内板や登山道の整備が進んでいます。安全のため、山歩きは晴れた日の日中、明るい時間に行ってください。また夏場はマムシが高確率で出ます。秋冬が山歩きのベストシーズンです。

森の中を登ったり降りたりしているうちに・・・

山城最大の見どころ、堀切(切通)へとやって来ました!シラス地層を人工的に削って造られたもので、人がひとり、ふたりギリギリ通れるくらいの道幅です。その高さ、狭さに圧倒されます。

晴天の昼間でもこの暗さ。シラス地層の壁面が両側に迫る緊張感。難攻不落の山城、その雰囲気を今に残す堀切です。

堀切を抜けると、明るい景色が広がります。人里に出てきました。ゆっくり登って、3か所ほど立ち止まり説明を聞いて。1時間ほどの山歩きでした。

こちらは入来麓の種田さん宅。シラス地層から染み出た水でできた池が庭にあります。

おさこんばば(尾迫馬場)の印。麓にある「〇〇馬場」を見つけて歩くのも楽しいもの。

武家茶房Monjo(もんじょ)にて、お昼ご飯。まち歩き、山歩きのあとはより一層おいしく感じます。武家屋敷をベースにした武家茶房Monjoは、いつ来ても、ほっと落ち着く憩いの場所です。

今回のもう一人の達人!温泉ソムリエ六三四さん。入来温泉の「湯かいな話」を披露してくださいました。泉質の良さはもちろんのこと、湯の熱さで名高い入来温泉。実は山歩きの前に入るのがベストだとか。「ぬる湯は長く入ってリラックス効果。熱湯はさっと入って身体の活性化。運動能力が上がるはずです!次回は皆さん、入来温泉に浸かってから、山歩きしてくださいね」と笑いを取っていました。

晴天にも恵まれ、市内外よりたくさんの方が参加しました。

入来名物、金柑を使ったお菓子と「いりきわくわくまっぷ」。温泉、飲食店、山城攻略、滝案内、玉石垣のヒミツ、パワースポット、田の神さあと、入来麓をディープに楽しめるバラエティ豊かなマップが完成しました。入来麓観光案内所をはじめ、市内各地で配布中です。これを手に、ぜひ知る人ぞ知る場所を訪れてみて。

イベントの企画・実施、いりきわくわくまっぷの作成者でもある「いりきくノ一」のみなさん。大好きな入来麓を、さらに熱く盛り上げます!

この日のしめくくりに「入来湯之山館」へ。柴垣湯とアゼロ湯、2種類の源泉をかけ流しで楽しめるお得な温泉です。水風呂があり、温冷交互浴を心ゆくまで満喫できます。温泉の析出物が織りなす浴場は歴史ある温泉の貫録たっぷり。

駐車場奥に足湯もあります。

入来麓まち歩き、いかがでしたか。あおマガ2020年春号でも誌面にて紹介しています。梅、桜に包まれながら通りを歩けば、そこに息づく質実剛健な「麓」の精神に触れることができると思います。