木のぬくもりを届けたい~ARI.ウッドスタジオ~

薩摩川内市隈之城にあるARI.ウッドスタジオのギャラリー。玄関から一歩なかに入ると、ふんわりとした木の香りが鼻をくすぐります。「よくお客さまからそう言われるんだけど、私たちはもう気づかないの」とほほ笑むのは有村香織さん。ご主人の木工作家、有村圭弘(よしひろ)さんが2015年にオープンして以来、ご夫婦二人三脚でギャラリーを営んでいます。

ころんとした木のまるみ、なめらかな手ざわり。個性豊かな木目を活かす有村さんの作品です。

笑顔のたえないふたり。互いに「ソウルメイト」と認めあう

有村圭弘さんは薩摩川内市出身。川内高校を卒業後、多摩美術大学に進学し、グラフィックデザインを学びました。東京で就職したのち帰省し、30歳で家業を継ぎます。そのころから「木を手に何やら造ってたんですよね。それが楽しくて」と木工作家を志すように。ご結婚やご自身の病気など、さまざまな境遇の変化を経て、木工作家になろうと一念発起。鹿児島県立宮之城高等技術専門学校の室内造形科に入学します。有村さん46歳の時でした。

写真前列右端が有村さん。年下の学生たちにまじり、技術を習得。首席で卒業し、2006年に自身の工房ARI.ウッドスタジオを立ち上げました。

ギャラリーの奥にある工房では、ラジオを聴きながら作業に打ち込むそう。

出番を待つ木材がずらり。「ここにある木を使い切ることが目標かな」

納得のゆくまで、時間をかけ、手をかける。

人気の逸品「カフェトレイ」

作品づくりには香織さんのアイデアが活かされることも多いそうで、写真のカフェトレイも「家庭訪問の時に、こういうのが欲しいなあ」というひと言から生まれました。「私はこの人の作るものが好きなので。作って、とお願いしました」と香織さん。はい、作りますと、すぐに取り掛かった有村さん。香織さんならではの感覚を「とても頼りにしています」と笑います。

シグニチャー作品のひとつ「惑星」シリーズ。木目の織りなす模様が「惑星みたいだね」とお客さまから言われたのが由来とのこと。初期の作品は装飾的なものでしたが、次第にシンプルな今のかたちへ。針を選び、オリジナルの時計を作ることもできます。

室田志保さん(写真右)と

そんな有村さんに2020年、ひとつ節目となる仕事がありました。それが有名ホテル・星野リゾート「界 霧島」のルームキーの作成です。薩摩ボタン作家の室田志保さんからの「ARI.さんしかいない!」という熱烈なオファーでコラボレーションが決定。コロナ禍もあり対面での打合せが限られるなか、リモートでの打合せも重ね、試作品を送り合って作業を進めました。

薩摩ボタンを納めた有村さんの木のパーツ。小さな手にもすっとなじむ。(写真はキーを付ける前の状態のもの)

「おかげ様で、いいものができました」と嬉しそう。

こちらは薩摩川内市勝目町にある「すくすく保育園」。子どもたちの使うテーブルは有村さんのオーダーメイド。園児の座高にぴったりで、エッジはすべて丸みを持たせてあります。子どもたちも大好きなテーブルだそう。

テーブルの脚を修理して再び納品したある日。3時のおやつを見届けながら。

コツコツと暮らしに寄り添う作品をプロデュースしてきた有村さん。今後は「木で描くアートピース」、より絵画的な作品にも挑戦したいと意気込んでいます。「木っていいよね。ずっと使えて、残っていくものだから」と作品を愛おしそうに見つめる有村さん夫妻。「気軽に作品を見に来てほしい」と呼びかけます。小さな森のようなARI.ウッドスタジオのギャラリー、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ショップ&ギャラリー ARI.ウッドスタジオ
薩摩川内市隈之城町356-1
090-3884-8093
11時~18時 金曜・土曜・第1・3日曜日OPEN
※上記時間以外は事前にお問合せください

 

Wood-y Warm-y Holidays!

取材・文 / 泊 亜希子